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【芸能】主演はノーギャラ!大ヒットの映画「カメラを止めるな!」興収は誰の懐に?日本映画界“搾取”のカラクリ

2018年12月04日 11:22

 製作費300万、当初公開映画館2館だった「カメラを止めるな!」。しかし、その後、動員数は200万人を突破し、累計の上映決定館数は350館以上(11月26日時点)まで広がっている。興行収入も30億円を突破し、まだまだ伸びる見込みだ。ただそこで気になるのが、この莫大な興行収入が一体誰の懐に入るのかである。「カメ止め」の大ヒットの裏で私腹を肥やす人物と、そこから見える日本映画界の搾取の構造について、芸能プロデューサー野島茂朗氏に聞いた。

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「カメラを止めるな!」(以下、カメ止め)の監督を務めた上田慎一郎氏は、テレビで「一般的に、興行収入がどんなに増えても、日本では監督や役者には入らない」、主演の濱津隆之氏も「ノーギャラだった」と発言し話題になっている。

各キャストや監督に利益がほとんど分配されないというケースは、日本映画界では意外によくある話のようだ。そこでまずは映画業界の簡単なカネの流れから解説しよう。

 そもそも国内の映画業界は「製作」「配給」「興行」の3部門に分けられる。これをモノの製造・販売に例えるなら、製作がメーカー、配給は卸売業、興行は小売業とイメージすると分かりやすい。

 具体的な役割分担は、製作は映画を企画し、資金とスタッフを集めて作品を作る。配給は上映する映画館を確保して、映画を宣伝。興行は上映する映画館である。よく耳にする興行収入とは、観客が興行会社(映画館)に支払う入場料の合計金額のことを指し、最も映画のヒット度を可視化しやすい数字である。

「興行収入は、それぞれ3部門(製作、配給、興行)に分配されます。一般的には興収の50%ずつを興行会社と配給会社が受け取ります。そして、配給側が取った興収の50%から配給手数料(一般的に30~40%)を引いた額が製作側に渡る仕組みです」(野島氏、以下同)

 このセオリー通りに考えれば、興行収入が30億円なら、まず興行会社に15億円、配給会社に15億円が入る。そして、配給会社が得た15億円の中から製作会社に4億5千万円~6億円程度が支払われる計算だ。

 大手配給会社(東宝、松竹、東映など)の場合、3部門を一括して自社で行うこともあるが、日本の商業映画では特に製作側に多くの組織とヒトが絡んでいる。

 さらに、「カメ止め」の場合は、一般的な映画製作の形態とは異なるため、製作側内部では儲かる人間、搾取される人間が2分化されている。

小規模な「カメ止め」の特殊性
「カメ止め」は、一般的な映画とは異なり、大手配給会社や製作会社が作ったものではない。監督と俳優の養成スクール「ENBUゼミナール」の「シネマプロジェクト」というワークショップから生まれた作品だ。

 今作は上田監督にとっては初の長編映画であり、演者もワークショップのオーディションで選ばれた無名の役者たちである。製作陣営も上田監督が代表を務める映画製作チームが担った。さらに、元々都内2館の映画館でしか上映予定がなかったため、当初の配給も製作元であるENBUゼミナールだった。

 いわば、一般的な国内商業映画とは異なり、完全に身内で作った極めて小規模な映画だったのだ。

 その後、全国拡大上映の際、配給に関しては大手配給会社「アスミック・エース」が協力した。一般の読者にとっては、ワークショップでの映画製作はあまり聞き馴染みがないだろう。しかし、映画業界の中では身近なものだという。

「ワークショップで映画を作ることはよくあります。しかし、ここまでヒットするのは異例です。メジャー作を手がけていない限り映画監督は食えないため、ワークショップを開催して稼いでいる人がほとんどです。役者からレッスン料を貰い、演技指導と自身の作品のオーディションを兼ねてやっています。また役者も指導とオーディションが兼ねられているため集まる人が多いです」

 ちなみに、「カメ止め」を生み出したワークショップを主催したENBUゼミナールは、監督や俳優を目指す人のための養成スクールとして1998年に設立された。スクールの代表である市橋浩治氏は、「カメ止め」のプロデューサーとしても映画に関わっている。

 これまで映画業界の仕組みや、「カメ止め」の特殊性を整理した。これを踏まえて、次に、30億にも達した“「カメ止め」バブル”で一番美味しい思いをしているのは誰なのかを探っていこう。

3億円の行方
「一番儲かったのは、配給に協力したアスミック・エースでしょうね。アスミックとENBUゼミナールがどのように契約しているかにもよりますが、配給が1社でない場合、半々から7:3が一般的。アスミック・エースのほうが取り分が多いのは確実でしょう。ENBUゼミナールは過去の実績がないため、下手をしたら8:2という場合もありえます。アスミック・エースはいい買い物をしましたね」

 それでも製作と配給を担ったENBUゼミナールには、製作費300万円を優に超える金額が懐に入ってくるはずだ。仮に15億円の内、アスミック・エースの取り分が12億円(8割)だったとしても、残り3億円(2割)がENBUゼミナールに入っている計算になる。

 監督や主演俳優のメディアでの発言や、現在の日本映画界の構造を踏まえ、その莫大な金を得たのは誰なのか――。

「おそらくはプロデューサーやその界隈の人たちでしょう。今回のケースでは役者はノーギャラ、監督のギャラも製作費から考えるに30万ほどだと思います。どちらも興行収入に応じてロイヤルティーが入る契約は結んでいないでしょうからね。しかし、一般的に製作会社や配給会社の役員、その会社に属すプロデューサーは臨時報酬という形で還元されるはずです」

 あくまで、これは野島氏の推測にすぎない。しかし、現在の日本映画業界の搾取の構造を見れば、こうした結論に至ることは決して突飛なことではない。

「映画がヒットしたところで、役者の扱いはブラック企業以下。何日も拘束されて、数万円程度しかもらえません。仕事がないときは工事現場で働いている役者も僕の知り合いにいます。製作会社や配給会社としては、『君にはこの役を数万円で与えて、あとのお金は払わない。でも映画に出た経歴は一生使えるから、ありがたく思え』という考えなのでしょう。監督も同様で、ワークショップや講師などをして食いぶちをつないでいくのがやっとです」

 日本映画界では、一般的に監督や役者のギャラは映画が作られる前の段階で、予算の中から決められることが多いのだ。

「大手事務所の主役級の役者や有名監督でない限り、ロイヤルティーの契約も滅多に結ばれることはありません。日本でもし、俳優が権利を主張しロイヤルティーの契約を口にしようものなら、煙たがられて使ってもらえなくなるのがオチです。日本でも一刻も早く、海外と同じく監督や役者たちが権利を主張し、団結したほうがいいと思いますね。法に守られたなかで団結していかない限り、これからも製作や配給にボロ雑巾のように使われ、搾取されるだけです」

 監督や役者が汗水垂らして生んだヒット作の裏で、甘い汁をすすり祝杯を上げる周縁の大人たち。「カメラを止めるな!」のヒットは、日本映画界の「搾取を止めろ!」の大号令へと繋がるのだろうか。

http://news.livedoor.com/article/detail/15687658/


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